CDR実施のイメージ

CDRは、情報収集、検証、提言の3つのステップで進められます。これらをスムーズに行うために、情報収集を担う「事務局」、検証を行う「多機関ワーキンググループ」、提言をまとめる「推進会議」の体制を整備する必要があります。ここでは、各体制の目的と概要についてご紹介します。

死亡事例の発生 医療機関からの連絡・死亡小票による把握 事務局 推進会議 多機関検証 ワーキンググループ(推進会議下部組織) 関係機関による情報提供 1 死亡事例の検知 2 検証の依頼 3 関係機関への情報提供依頼 4 情報受領・死亡台帳の作成 5 個別/概観検証の実施 6 検証結果・予防策案の提供 7 (年度末)検証結果・予防策のとりまとめ 8 都道府県知事への提言の実施 提言の公表

こどもの死亡に
関する情報を
収集する
「事務局」の設置

検証に必要な、地域におけるこどもの情報の一元管理を目的に、実施主体である都道府県に事務局を設置します。医療機関から死亡原因等の情報を提供してもらうことに加え、警察や教育、福祉等のさまざまな機関からも情報を得ることが、事務局の主な役割です。

検証を実施する
「多機関検証ワーキング
グループ」の設置

事務局が収集した情報をもとに詳細な検証を行うため小児医療・法医学等の医療の専門家や、児童福祉・教育・保育・警察(検視)等で構成される多機関検証ワーキンググループを設置します。この多機関検証ワーキンググループで行うのは、各事例の背景を深く理解するための「個別検証」と、地域における傾向や特徴を把握する「概観検証」の2つです。

検証結果を報告し、
提言をまとめる
「推進会議」の開催

こどもの死亡に関する効果的な予防策を検討するためには、多数の関係者による協力が必要です。そのために事務局は、地域の医療機関、教育機関、警察・消防など複数の関係機関の専門家で構成された推進会議を定期的に開催します。この推進会議では、主に検証結果の報告や提言の作成、また年間の活動計画を共有するなど、CDR事業を推進する役割を担います。

未来のこどものために必要なCDRは「回復と創生のきっかけ」CDR研究に携わる医師が語る
「回復と創生のきっかけ」
CDR研究に携わる医師が語る

CDR(Child Death Review:予防のためのこどもの死亡検証)とは、医療機関や行政をはじめとする複数の機関・専門家が連携して、亡くなったこどもの事例を検証し、予防策を提言する取組です。

その目的は、予防策を導き出すことで、未来の防ぎうるこどもの死亡を少しでも減らすことにあります。こどもたちにとって安全で安心な社会を実現するために、令和2年度より、複数の自治体でモデル事業としてCDRの取組が実施されています。

今回は、CDRの研究や、こどもの死に大きく関わる小児科医に向けてCDRを推進するための啓発活動などに取り組む、沼口敦先生(名古屋大学医学部附属病院救急・内科系集中治療部部長、病院講師)にCDRについてお話しを訊きました。

沼口敦先生

沼口 敦(ぬまぐち あつし) 名古屋大学医学部附属病院 救急・内科系集中治療部 病院講師

1996年名大卒。2004年あいち小児保健医療総合センター循環器科医長。名大病院小児科病院助教、同院救急科病院助教を経て、18年より現職。14~20年まで日本小児科学会子どもの死亡登録・検証委員会に所属し、22年からは同学会予防のための子どもの死亡検証委員会委員長を務める。

CDRとは何か、何のために必要なんでしょうか。

CDRは、効果的な予防策を導き出すことを目的にいろんな情報を基に行う、「こどもの死亡に関する検証」の取組です。検証によって、「未来をより安全な世の中にするために何ができるか」ということを一生懸命考え、学んでいくことを目的としています。

CDRの取組は具体的にどんなことを?

医療機関でこどもの死亡が発生した場合、医療機関からCDRの会議体に対して連絡が入ります。それを受けて、他の機関に対して「この事例に関して、何か情報を知っていたらその情報をください」という連絡をします。そして、その情報がCDRの会議体に共有されるというような流れが想定されています。

ただ、CDRのモデル事業を実施しているどの都道府県でも1割ぐらいの方は医療機関ではないところで死亡に至っています。行政がその死亡を把握した際に、関係した可能性のある医療機関に「もし死亡したこどもに関係する情報があれば情報をくださいね」と依頼すると同時に、その他の機関にも、「その事例に関してなにか情報をくださいね」と依頼し、CDRの会議体に対して情報共有をしていただく流れが想定されています。

CDRの今後の展望を教えてください。

全国に展開してほしいですね。ある地域に生まれたこどもだけがCDRで検証されることができて、その別の地域のこどもはまったく検証されないのではなく、全ての地域で同じようにできるようになればと思います。

加えて、今はこどもが死亡すること、死亡したことに対して話し合うことがあたかもタブーであるかのような、特に自殺などでそういう方向が顕著だと思います。そうではなく、話し合うことで次に活かせることがあるというような雰囲気、死ということに対してタブーではなくしていくという変化が、CDRの取組によって醸成されるといいなと。

実際にこどもを亡くされた方が、「こどもが亡くなると地域社会全体がものすごいダメージを受けるが、検証することによって地域社会の回復と創生のきっかけにできるんじゃないか」ということを仰っていました。私自身は、社会全体がこどもの死から目を背けず、安全な社会を作るために努力していくという考え方などが根付くといいなと思い活動しています。